こんにちは!ユアタリです。
今回から、漫画「黒執事」およびそのTVアニメ版「黒執事」、「黒執事Ⅱ」についての考察記事を順にあげていきます。
本記事含む、「黒執事考察」における内容の考察以外の「すべて及び一部の引用文章、すべての画像、関連する参考資料など」は、原作者枢やな氏始め、スクウェア・エニックスならびに各権利者に帰属します。本記事を含む、「黒執事考察」すべての記事は、著作権を侵害することを目的としたものではありません。予め、ご理解の程よろしくお願いいたします。
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物語の重大なネタバレがあります。ご注意ください。
考察における前提
- 双子を区別するため、第1話より登場しているシエルのことを「坊っちゃん」、兄である存在のことを「真シエル」と表記。
- 契約前を悪魔、契約後をセバスチャンと表記。
- 基本的考察は、原作漫画のみ。
- 枢先生の物語設定には矛盾がないことを信じる。
物語における前提
- 主人公は、セバスチャンである。
- 本作は現代における史実をまじえた「フィクション作品」である。
- 上記によって、時代考証(携帯電話や、血液型)などが曖昧な部分が発生する。
- 登場人物が全員真実を語っているわけではない。 ※ただし、セバスチャンは坊っちゃんと契約してからは契約内容に従い、坊っちゃんに対して嘘はつかない。
- セバスチャンと契約を結んだのは、坊っちゃんのみである。
- 坊っちゃんは、目的を果たすとセバスチャンに魂を食われる。
- 坊っちゃんと悪魔との契約は、絶対である。
悪魔で執事、「セバスチャン」の前提
- セバスチャンは、悪魔である。
- 「セバスチャン・ミカエリス」は、本名ではない。
- セバスチャンの年齢は、不明である。
- セバスチャンは、坊っちゃんに対してモノローグ以外でシエル・ファントムハイヴとは呼称しない。
- セバスチャンは、坊っちゃんと3つの契約内容を結び、契約相手である「坊っちゃん」の目的遂行完了後、報酬として「坊っちゃん」の魂を得られる。
- セバスチャンは、死神たちに「害獣」であると認識されている。
- セバスチャンは、不死とは名言されていない。
準主人公、「坊っちゃん」の前提
- 「シエル・ファントムハイヴ」及び「シエル・ファントムハイヴ伯爵」を名乗っている。
- 女王の番犬の任命を、爵位の叙勲(領地の返還)と同時にされている。
- 小児喘息を羅患した過去があり、過去には頻繁に体調不良を起こしている描写がある。また、作中においても体を冷やした際などは咳き込む描写がある。(ただし、黒ミサにおいては何故か悪環境下でありながら、咳き込んでいない)
- 髪型が眼帯に向かって左側に分けられている。(真シエルは右側)
- 坊っちゃんの目的は、「自分たちを滅ぼそうとした、背後関係を認識した上(自分の目で復讐すべき相手を見極めて)で、セバスチャンではなく自分の手で始末すること」。
- チョコ、ガトーショコラが好きである。(イチゴが好きなのは、真シエル)
- 正体は、「シエル・ファントムハイヴ」本人ではなく、双子の弟である。
- 上記でありながら、シエル・ファントムハイヴに成り代わって、伯爵の爵位と女王の番犬を任命され、女王の憂いを払いながら、自身の目的を遂行するために「待っている」。成り代わっている具体的な理由は不明。(この点をアバーライン警部が疑問視している)
- 坊っちゃんの本名は、不明である。(ファミリーネームはファントムハイヴ)
原作の物語の前提
- ファントムハイヴ家襲撃事件(1885年12月14日)から3年から経った1888年より物語が開始される。
- 「あの日」とは、坊っちゃんと悪魔セバスチャンが契約を交わした日(黒ミサの日)のことである。
- 坊っちゃんは、自身が名乗る名称(シエル・ファントムハイヴ)について「悪しき名」であると幾度も宣言している。
- 「あの日」以降、セバスチャンは契約の内容どおり、「坊っちゃんには嘘をつかない」※契約印で3つの契約で縛る前はこの限りではない。
- ファントムハイヴ家襲撃事件の生き残りは、坊っちゃんと真シエルと、当時の執事長のタナカだけである。(その後、「あの日」で真シエルが死亡?)
以上のことを基本ルールとして、前提に考察します。
黒執事の真実とは?
「黒執事」は、本筋である坊っちゃんの目的遂行という縦軸と、各エピソードの横軸を交差した、物語である。各エピソードをこなしていき、読者である我々に、縦軸の進み具合と、「真実」が明らかになります。単行本28巻時点でわかっている「真実」は以下の通り。
1885年、ファントムハイヴ家襲撃事件
双子の誕生日である、12月14日。事件発生。
双子の誕生パーティを準備している様子がわかる。18時を過ぎるまで、双子は寝てしまっていた。(シエルは本当に寝ていたのか不明)
18時にタナカが部屋に迎えに来る約束をしているが、来ないため、シエルが一人で確認しに部屋を退出。
シエルがなかなか戻らないため、19時に坊っちゃんも退出。
使用人が何人も惨殺されているにも関わらず、犬のセバスチャンに口の拘束具をつけられた状態で生きて閉じ込められているところを坊っちゃんが助ける。(坊っちゃんはまだ使用人たちの惨殺死体を見ていない)
犬のセバスチャンの吠え声が聞こえる両親の部屋へ向かう坊っちゃん。
犬のセバスチャンが殺されている部屋で、ヴィンセントとレイチェルが二人寄り添って殺されているところを坊っちゃんが発見。ヴィンセントはこの時点で左手人差し指にしていた当主の指輪を所持していない。(=シエルがここにいたことの証明≠両親と犬のセバスチャンを殺した証明)
その後、タナカが誰かと戦闘しているところへ駆け寄る坊っちゃん。
タナカ
「こちらに来てはいけません!!」
「お逃げください」
「シエル様は…貴方様には酷すぎ…ッ」
タナカは肩甲骨の間を後ろから刃物で刺され、坊っちゃんを覆うように倒れる。
坊っちゃんは背後に潜む人物に目隠しをされ攫われる。
疑問点①:真シエルは本当に寝ていたのか?
そもそも坊っちゃんはなぜ寝てしまっていた?
疑問点②:なぜ真シエルは「長男<ぼく>の役目」として坊っちゃんを置いて、いつも側にいた坊っちゃんを置いて屋敷の様子を見に行った?
こんな異常事態で、いつも病的なまでに坊っちゃんと一緒にいることを望んでいる真シエルでありながら、今回は突き放した=坊っちゃんに見られたくなかった?(事前に事態を把握していた?)
疑問点③:18時から19時にかけて1時間の間、シエルは何をしていたのか?
拉致後に坊っちゃんに対して「指輪を取りに行っていた」ことを言っているが、本当にそれだけか?
疑問点④:犬のセバスチャンは生きて閉じ込められていたのに、 なぜその後両親の部屋で殺されたのか?
襲撃犯の立場からすれば、使用人同様犬のセバスチャンは始末したほうが楽では?(真シエルが犯人だった場合、本当は犬のセバスチャンを殺したくなかった?)
拉致の後、双子は共に悪魔崇拝の貴族に売られる
1回目の黒ミサにおいて、12月25日という記載があり、シエルが「まだ10日しか経っていない」ということから、12月15日(ファントムハイヴ家襲撃事件の翌日)にすぐ売られていることがわかります。
疑問点⑤:この貴族は誰?
この後悪魔に殺されているが、屋敷まで行っておきながら、坊っちゃんはどの貴族だったのか調べていないのか?
1ヶ月後、黒ミサ開催。真シエルを犠牲に坊っちゃんは悪魔を召喚
坊っちゃんモノローグ
「誰も 助けてくれない」
「神なんていない!!!」
坊っちゃんセリフ
「…てやる」
「こいつらを」「こいつらを」「こいつらをこいつらをこいつらを」
「殺してやる!!」
悪魔セリフ
「応えよ」
「私を喚ぶのは誰か?」
「大いなる犠牲を捧げ 快楽と富 厄災と悲劇を望む 神に唾吐く 愚か者は?」
中略
坊っちゃんセリフ
「し…知らない…っ お前なんか呼んでない!」
悪魔セリフ
「いいえ貴方です」
「神を否定し この世を呪い 哀れな犠牲と引き換えに 願いを叶える権利を得た人間よ」
「貴方が悪魔(わたし)召喚するために支払った代償は兄の魂!」
中略
「歓喜するがいい!」
「「犠牲」「願い」そして「契約」によって私は貴方の下僕となる」
「愚かな願いが果たされ その魂を引き取るまで」
中略
「残念ですが事実です」
「渡り賃が支払われなければ 私は現世(ここ)にいない」
坊っちゃんセリフ
「僕はそんなの望んでない!!」
「シエルを返して!!」
悪魔セリフ
「随分と大きな声で喚ばれたものだからどんな人間かと思えば まだ頭に卵の殻を付けた雛鳥だとはね」
「貴方は私を召喚してしまった その事実は永遠に変わらず 払われた犠牲は二度と戻らない」
「消えろ と望むならそれも叶えましょう 貴方は大きな犠牲を払った」
「悪魔(わたし)と契約して願いを叶えるも叶えないも 貴方の自由」
「渡り賃はしかと頂きましたから」
中略
坊っちゃんセリフ
「欲しい…力が欲しい…」
「僕らをこんな目にあわせた奴らに復讐する力が!!!」
「悪魔!お前と契約する!!!」
契約内容は以下の通り。(出典:単行本27巻136話「その執事、参上」)
契約内容1:契約者に嘘を吐かないこと
この契約1以降、悪魔は坊っちゃんに対して嘘はつかない。
この契約前に確認で、坊っちゃんは悪魔の「死者を生き返らせることは可能なのか?」と質問している。
ただし、悪魔はここで少し沈黙を置いてから「穏やかな時間を約束しますよ」としか答えておらず、正確な答えを返していない。つまり、可能か不可能かを明言していないので、結局のところ不明。(坊っちゃんは契約1の後に聞き直す必要があった)
契約内容2:契約者の命令に絶対服従(付帯条件:契約者が「命令だ」と言ったときのみ)
例外として、「『願いを増やす』、『願いを取り消す』ことはできない」と契約1以降に言っている。
契約内容3:契約者が復讐を遂げるまで裏切らずに守り抜くこと
復讐の対象 | 僕らをこんな目にあわせた奴らとその黒幕 |
黒幕の定義 | 今後見極める |
ここで契約のまとめと重要な「疑問点」
悪魔を召喚するためには、「神を否定」し、肉親を生贄にする必要がある。
この、『生贄』という言葉に引っかかります。
生け贄/犠牲(読み)イケニエ
デジタル大辞泉の解説
いけ‐にえ〔‐にへ〕【生け×贄/犠=牲】1 人や動物を生きたまま神に供えること。また、その供え物。「―をささげる」
疑問点①:生贄と犠牲の違い
生贄だった場合。真シエルは、悪魔崇拝の男性にナイフで刺されました。この時点では辛うじて生きていたことになってしまう。その後、悪魔が「渡り賃」として魂を食ったという流れがスマートである。つまり、真シエルを本当の意味で殺したのは「悪魔=セバスチャン」ということになる。
悪魔が何度も坊っちゃんに伝えている「犠牲」であると主張している形容詞(大いなる犠牲、哀れな犠牲、払われた犠牲、大きな犠牲)が、その都度異なる理由は、なぜだろうか。これは、真シエルのことのみなのか?もしくは他にも犠牲が?
疑問点②:悪魔を召喚する条件を揃えていたのは双子とも両方ではないか?
真シエルも、檻の中ではサンタクロースの話の流れで「神なんていない」と発言している。真シエルもまた坊っちゃんと同様、犠牲さえあれば悪魔を召喚する条件を揃えていたのではないでしょうか。(後述の、ファントムハイヴ家襲撃事件においての真シエル黒幕説に記述)
疑問点③:悪魔と契約するまでの内容が矛盾している?
「「犠牲」「願い」そして「契約」によって私は貴方の下僕となる
「愚かな願いが果たされ その魂を引き取るまで」
- 犠牲=現時点では真シエルの魂
- 願い=復讐する力
- 契約=上記契約3点
- その魂を引き取るまで=坊っちゃんの復讐が完了し、魂を食うまで
犠牲は対価として理解できます。
しかし願いと契約が別扱いなのはどういうことでしょう。
願い=契約ではないことが強調されています。坊っちゃんの願いが「復讐する力」で、その具体的内容が契約になっているということでしょうか。願いをふまえて悪魔が実行したものは、4つになります。
であれば、1つ目の契約で「嘘を吐かない」の前に、「こいつらを殺せ」という願いはカウントされていないことになります。
悪魔が3つまでなら願いを叶えるというもの、これは真実なのかどうかは坊っちゃんは質問していません。(嘘の可能性がある)
簡単にまとめると、
甲(悪魔)、乙(契約者)とする場合。甲は、人間の魂を犠牲に召喚が可能であり、召喚後に願いを叶えるものとする。願いは以下の3点の通り。願いを叶えた後、乙の魂を報酬とする。
という書き方にすると、「殺せ」という命令はそもそも何なのか?に引っかかります。
そもそも悪魔は嘘つきだから、契約前に言っていることはデタラメなら、契約後に改めて真実しか話せない状態で聞き直す必要があります。
もっと言うなら、3つの契約のことを願いといったり契約といったりと、定まっていません。
そもそも、坊っちゃんは3つの契約の前に悪魔に対して「シエルを返して」と言っていますが、悪魔はこれに対してスルーしています。
坊っちゃんセリフ
「僕はそんなの望んでない!!」
「シエルを返して!!」
悪魔セリフ
「随分と大きな声で喚ばれたものだからどんな人間かと思えば まだ頭に卵の殻を付けた雛鳥だとはね」
「貴方は私を召喚してしまった その事実は永遠に変わらず 払われた犠牲は二度と戻らない」
「消えろ と望むならそれも叶えましょう 貴方は大きな犠牲を払った」
契約前のセリフなので信用ならない言葉ですが、悪魔は「現世に召喚されるための犠牲に真シエルの魂を払っているので、二度と戻りません」と返しています。
疑問点④:なぜ悪魔は真シエルのことを「兄」と認識していたのか?
「神を否定し この世を呪い 哀れな犠牲と引き換えに 願いを叶える権利を得た人間よ」
「貴方が悪魔(わたし)召喚するために支払った代償は兄の魂!」
坊っちゃんは悪魔に対して、双子の片割れを「シエル」と呼称しているはものの、召喚から契約時まで一度も兄であることを伝えていない。にも関わらず、坊っちゃんは「なぜ知っているのか」という質問すら出ません。
悪魔召喚に関して、双子だった場合は兄を捧げるセオリーでもあるのか?真シエルではないことは状況証拠で理解はできるが…。なぜ知っているのか?真シエルの魂を食って、その魂を吟味することで知っているのか?
状況証拠ではない、何か確定的な証拠があって「兄」と識別しているのではないか。
ただ、描写としては、最初から3つの契約を結んだあと(さらにはその後の劇中)においても、坊っちゃんが自分はシエル・ファントムハイヴであることを主張するとき、悪魔は意味深な笑みを浮かべています。
よって、悪魔は召喚以前から、『シエル・ファントムハイヴが伯爵を継ぐ長男であること』を認識していることがわかります。
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