小話

T君の話

活動的な馬鹿より恐ろしいものはない。

ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ(Johann Wolfgang von Goethe、1749年8月28日 – 1832年3月22日)

本記事は、フィクションです。

過去および現在の実在人物・団体などにはいっさい関係ありません。

T君との出会い

彼との出会いは高校2年だったかと思います。同じ学校に通っているが、一度もクラスをおなじになったことはなかったが、地元が近いという理由で共通の友達を介して遊ぶ仲になったのです。

その当時、メンズエッグやメンズナックルといった「お兄系」のファッションが流行っており、T君のファッションは「綺麗めお兄」というジャンルをよく好んでいたことを覚えています。

エピソード1・スターバックス

彼はとにかく「おしゃれ」なものに固執していた。そして、金に対しての執着も並外れていました。

しかし、その行動と発言は当時の高校生にあるまじき、夢物語ばかりで、早い話が虚言癖があったのです。

 

ある日のこと、地元が近いメンバーで夜中集まることになったのです。

アルバイトをしているとはいえ、大した金額も持っていなかった当時の僕らは、移動手段が自転車が主なもので、片道20分をかけてスターバックスへ行ったこともある。

T君をはじめ、T君と仲のいいメンバーはとりわけなぜかスターバックスを好んでいて、「スターバックス=おしゃれ」という考えに取り憑かれていたのです。そして、タバコを吸うことが一種のステータスだったのか、テラスでしかタバコの吸えないスターバックスで真冬の寒空の下、テラスでコーヒーを飲みながらたばこをふかしていた。

今思えば、なぜ寒い思いをしてまで、20分自転車で移動をしてスターバックスの店内であったまることなく寒いテラスでタバコを吸いながら中身のない会話をしていたのかは謎である。

彼はヘップファイブで買った、高校生にしては高めの衣類に身を包み、5000円程度の自転車で20分かけて、スターバックスへ友人を連れてコーヒーを飲みに行くことに一種のプライドを持っていた。痛い話だ。

エピソード2・カラオケ

高校時代できる遊びなんて、お金のかからないものがほとんどだ。

しかし、T君は身分不相応な生活(経済的に余裕のある生活)を望んでいて、よくいえば「上昇志向が高かった」。

 

ある日の出来事だ。

僕はT君からメールがあり、遊べるなら遊ぼうとカラオケに誘われたのだ。

無論、カラオケは遊びの鉄板コースだったので、何ら嫌がることもなく、誘いをOKした。

そして、彼の家の前に約束の時間についたので、電話をかけて呼び出すと「まだ準備してるから少し外で待ってて」という返事がきたので、待つことにした。

待った時間は30分

 

30分もかけて出てきた彼は、VO5というヘアスプレーで丁寧に髪の毛をセットしていた。また、今で言うZARAやコムサでありそうな黒のテーラードジャケットと白シャツに身を包んで出てきたのだ。30分待たせたことに謝りもしない彼は、どこか家を見られたくない様子だった。家は長屋(?)のような、暗い路地にある場所で、なかなかどうして厳しい生活環境であることは見て一発でわかった。僕はT君の経済環境など触れることなく、30分待たされたことだけに苦情を一言言い、やっとカラオケにいくことができたのだ。

エピソード3・タバコ

タバコのニコチンの依存性は認めよう。

だが、彼は別のものに依存しているようだった。それは自分自身だったのではないかと今では思える。

 

カラオケとは別の日のこと、T君を含め数人で会うことになったのだが、その日はなぜか空気が重たかった。理由は今でもわからないが、どうやらT君の機嫌が悪かったのだ。

「どうしたん?」と聞くも、詳しいことは言うことなく、ただただ不機嫌でどうすることもできなかった。それでいて触れることもできないため、放置を決め込むしかなかったため、話をおいていつもどおり中身のない会話を増やしていた。

するとT君は脈略なく「タバコ吸わないとやってられない」とすぱすぱとタバコを吸い始めた。

17歳の子供が、タバコを吸わないとやってられない状況がよく飲み込めなかった僕らだったが、彼のその言葉に触れたところで抜本的な解決になることもなく、詳細を語ろうともしない彼への介護のような腫れ物扱いにはそろそろ辟易してきたので、全員がスルーするほかなかった。

エピソード4・居酒屋

また別の日のこと。

T君と僕と別の友人合計3人で居酒屋に繰り出した日があった。

彼は特別飲みすぎる様子もなかったが、アルコールに慣れていないのか、チューハイ2杯でベロベロになっていた。なれていなければ仕方がないとは思っていたが、普段からお酒にはなれているという話だったので、どうしたものなのかと不思議に思っていると、歓楽街に出て歩くといきなり走り出し、どこかへ行こうとすると急に止まって吐き出してしまったのだ。

もしかしてその当時は本当はお酒がだめだったんじゃないのかと今は思う。

アルコールが体に合わないのに、お酒を飲める自分という幻想に合わせるために、無理して飲んでいたのだったのだったら、寂しい話だ。

エピソード5・ネットワークビジネス

それから数年後、彼との関わりもほとんどなくなったところ、T君の話をきく機会があった。

なんとネットワークビジネスをして、知っている人のほとんどに誘いのメッセージを飛ばしているという内容だった。

ネットワークビジネスや、副業のことは知らないわけではなかったが、今でこそそういった人の傾向がわかることがある。

  1. もともとの家庭の経済状況が不安定
  2. 裕福さに強烈に憧れている
  3. 偽りの自分を演じるうちに、その帳尻が合わずに苦しみやすい

この3点が当てはまるのだ。

 

さらに、別の友人から「T君からネットワークビジネスの仲間になってほしいと誘われて困っている」などという話をきいた。

そんな彼は、今現在、ガードマンに精をだしていることから、ネットワークビジネスで成功しているわけではないようだ。

なぜT君は成功できなかったのか

  1. 虚言癖があった
  2. 眼の前のお金に執着するだけで、自分への投資をしてこなかった
  3. 友人に見限られる行動が多かった
  4. 本当に心をさらけ出せる友人がいなかった
  5. 数少ない友人ですら粗末な扱いをしてしまった
  6. 知人すべてをネットワークビジネスに巻き込もうとしてしまった
  7. 虚栄心が非常に強かった

以上の7点から、自滅したのではないかと推測される。

 

Tinderをはじめ、僕に接触を試みるネットワークビジネスの人間はだいたいこの7点のいくつかが当てはまってしまう

 

営業で成約率50%以上の人が言った言葉が全てだ。

「ネットワークビジネスだろうが、副業ビジネスだろうが、楽して稼ごうとするやつはだいたい養分になる。普通の仕事のように徹底的にビジネスとして割り切って努力をする人だけが残る。」

 

T君は、努力しなかったということなのか。

T君の現在

なぜか僕だけネットワークビジネスの誘いはなかった。

この点だけは謎なのだが、今後T君を話をする場合にはぜひ具体例を交えた収支表を持参してもらいたいものだ。そして、友人・知人をなくした彼が今どういう気持ちで生活をしているのかもきいてみたい。